虫歯の原因【2章-2】 

虫歯の原因はプラークに潜む「ミュータンス菌」

プラークには多くの細菌が潜んでおり、その中には虫歯菌も存在します。その虫歯菌の中でも、最も強い菌がミュータンス菌です。

ミュータンス菌は食べ物や飲み物の糖分を分解し、歯の表面にひっつくことでプラークを形成します。そうして、どんどん菌を増殖していくのです。

ミュータンス菌を含む虫歯菌は糖分をエサとして酸をつくり、この酸が歯を溶かしていきます。

甘いものはミュータンス菌(虫歯菌)のエサとなるため、摂取のしすぎには注意が必要です。

その他の虫歯の原因「脱灰(だっかい)と再石灰化」

虫歯菌が酸を出すことで、口の中が中性から酸性に傾く場合があります。これを脱灰(だっかい)と呼び、脱灰することで虫歯になりやすい環境ができ上がります。

健康な口腔内の場合、脱灰したあとに再石灰化(さいせっかいか)と呼ばれる唾液の力が働き脱灰した部分が修復されて、元の中性の口腔内環境に戻ります。

通常の口腔内は、脱灰と再石灰化が交互に行われ中性を保っています。しかし、糖分を頻繁に摂取すると脱灰の回数が増え、口腔内が酸性に傾く時間が増えてしまいます。

つまり、間食が多く、甘い飲み物をよく飲む方は、脱灰が増えて虫歯になるリスクが高くなります。

【表:「脱灰と再石灰化による口腔内pH値の変化」】

画像出典:倉治ななえ「図解むし歯 歯周病の最新知識と予防法」日東書院,2015年発行

虫歯を増やすその他の原因

虫歯の直接的な原因はプラークに含まれる虫歯菌ですが、虫歯が進行する原因は他にもあります。

<虫歯を進行させる原因>
・睡眠不足
・口腔内乾燥
・歯磨きの磨き残し
・栄養不足

生活習慣が乱れると虫歯が進行する原因にもなるので、食事や睡眠が乱れている方は注意しましょう。

虫歯ができるメカニズム

虫歯ができるメカニズムは、以下の順番です。

<虫歯ができるメカニズム>
①ミュータンス菌が歯のエナメル質に張り付く
②糖分(食べ物や飲み物)を分解し、歯の表面にプラークを形成する
③細菌が酸を出し、エナメル質を溶かす
④バイオフィルムというバリアを形成する
⑤バリアの中で細菌が増殖しエナメル質を溶かし続け、歯に穴を開ける

画像出典:倉治ななえ「図解むし歯 歯周病の最新知識と予防法」電子書籍ページNo.219,日東書院,2015年発行

とりわけ、ミュータンス菌は糖分と合わさることで、虫歯の進行がどんどん進んでいくので、糖分や間食の取りすぎには注意が必要です。

虫歯の進行段階

虫歯の進行には、以下の5段階あります。

虫歯進行の5段階

①初期虫歯(C0)ー痛みなし
②エナメル質の虫歯(C1)ー痛みほぼなし
③象牙質(ぞうげしつ)まで進んだ虫歯(C2)ー冷たいものがしみて痛む
④神経まで進んだ虫歯(C3)ー何もしなくても歯が痛む
⑤歯根だけ残った虫歯(C4)ー顎が腫れて痛む

※C=「カリエス」虫歯の専門用語

【図:「虫歯の進行」】

図は「倉治ななえ「図解むし歯 歯周病の最新知識と予防法」電子書籍ページNo.242,日東書院,2015年発行」から改変

①初期虫歯の場合は、歯の再石灰化を促すことで治る可能性がありますが、②C1〜⑤C4は、歯科クリニックでの治療が必要です。

C1のエナメル質の虫歯は削る部分も最小限でいいので、痛みの少ない治療で済みます。しかし、虫歯が象牙質や神経に達してしまうと痛みが伴うため、麻酔での治療が必要です。

また、⑤C4まで進行が進むと、神経が死に膿みが溜まることや全身の健康を害する場合もあります。最悪の場合、抜歯することもあるので、虫歯はそのままにせず早めの治療を行うようにしましょう。

参考文献:倉治ななえ「図解むし歯 歯周病の最新知識と予防法」日東書院,2015年発行