誰にでも発症リスクのある「認知症」【1章-1】

認知症とはどんな症状?

「認知症=物忘れ」と思っていませんか?認知症の主な症状の1つに「物忘れ」がありますが、認知症の症状は物忘れだけではありません。

認知症の症状のは2つの種類に分けられます。

記憶障害(物忘れ)を含む実行機能障害、見当識障害、判断力の障害などの「中核症状」と呼ばれる認知機能障害と、「BPSD」と呼ばれる行動・心理症状です。

認知機能障害とは、簡単にいうと、自立した生活ができなくなってしまう症状が出る障害です。たとえば、当たり前にできていた料理や物のやり方がわからなくなってしまう症状(実行機能障害)や家族のことがわからなくなってしまう症状(見当識障害)が出てしまうと、一人での生活や今までの生活がむずかしくなります。

行動・心理症状とは、徘徊や暴力、幻覚、妄想などが起こる状態を指します。この行動・心理症状は。症状の重度や認知症の種類によって症状が出ないこともあり、環境や患者への接し方で症状が軽くなることもあります。

参考:浦上克哉「科学的に正しい認知症予防講義」翔泳社2021年出版

認知症の種類

認知症の種類はいくつかあります。その中でも発症数が多い認知症を4つご紹介いたします。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー認知症は最も発症数の多い認知症です。脳の一部が萎縮していくことで、記憶障害や見当識障害が起こります。アルツハイマー型認知症の原因は「アミロイドβ」という悪質なたんぱく質といわれています。しかし、なぜアミロイドβが蓄積すると認知症が起こるのかについては、まだ明らかな理由はわかっていません。また、アルツハイマー型認知症の治療法についても、完治する方法は見つかっておらず、症状の進行を抑えることしかできません。そのため、発症しないための予防対策をしっかり行うことが重要です。

血管性認知症

血管性認知症とは、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血などの症状によって引き起こる可能性がある認知症です。脳への血液供給の減少や脳組織の破壊によって、脳の神経細胞が死滅してしまうことで脳機能に障害が発生します。症状としては、記憶障害や見当識障害、からだの麻痺などがあります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体というたんぱく質が脳に悪さをして起こる認知症です。アルツハイマー型認知症に次いで、2番目に発症者が多いといわれています。症状の特徴として、パーキンソン症状(手足の震え、動作がゆっくりになるなど)や幻視などがあります。パーキンソン病やうつ病と勘違いされやすく、判断がむずかしい認知症ともいわれています。

前頭葉側頭型認知症

前頭葉側頭型認知症は神経変性によって前頭葉や側頭葉前方が萎縮して発症します。前頭葉に関わる「人格・社会性・言語性」と側頭葉に関わる「記憶・聴覚・言語」の機能が正常に働かなくなるのが特徴です。原因となる物質として、「タウたんぱく質」や「TDP-43」というたんぱく質が関与しているといわれていますが、明らかな理由はまだわかっていません。

認知症はどんな人がなりやすい?

認知症になりやすい人の特徴には以下のようなものがあります。

 周りとのコミュニケーションをとりにくい人

 ストレスが溜まりやすくうつ傾向にある人

 生活習慣病や生活習慣が乱れている人

2025年には高齢者の5人に1人は発症するともいわれており、認知症は誰でもなりうる病気といえます。また、いつもの生活習慣の中に、認知症になりやすくなる原因はたくさん隠れているため、認知症にならないための予防対策が重要になっています。

第1章では、認知症の原因や発症しやすくなる行動についてより詳しく解説しています。特徴に当てはまる方は、予防対策までチェックしてみてください。